令和5年4月に施行されたこども基本法では、子どもの権利の尊重を理念に位置づけ、子ども施策の策定、実施及び評価にあたり、子どもの意見を反映させるために必要な措置を講じることが定められました。私たちは、子どもの最善の利益を実現する観点で、子どもの意見表明と参加を大切にした地域や社会をどのように創っていくかが問われています。
本事業においても、子どもの意見をどのように居場所づくりに反映し、子どもの参加をどのように具体化することが、子どもの相談・救済につながる「気づき・見守り」機能の支援のあり方にもつながると考えています。
このような問題意識のもと、今後の子ども施策や本事業の推進を図るうえで何が必要で効果的か探るため、市民・地域活動や施策づくりに関わる皆さまをお招きして、ラウンドテーブルを開催しました。
〈参加者〉(順不同)
土肥潤也さん (NPO法人わかもののまち)
村井琢哉さん (特定非営利活動法人山科醍醐こどものひろば)
宇野明香さん (特定非営利活動法人happiness)
宅間和美さん (京都子どものミライ作り・ポレポレ)
竹田明子さん (京都市ユースサービス協会)
冨田泰行さん (京都市児童館学童連盟)
三宅正太さん (山科醍醐こどものひろば/ファシリテーショングラフィッカー)
オブザーバー:京都市
事務局:京都市社会福祉協議会 地域支援部
1 「こども・若者参画と意見反映」について
発題:土肥潤也さん(NPO法人わかもののまち 代表理事)
第1部では、こども家庭庁こども家庭審議会の委員を務めるなど、子ども・若者の意見表明と参画に学識を有する土肥潤也さんから、子ども施策に関する国の動向や、全国的な実践についてお話をいただきました。
○こども大綱について
こども基本法に基づくこども大綱では、子どもの意見反映と参画が基本方針のひとつになっています。ミスリードになってはいけないのが、「子どもの意見を聴く」とは子どもの意見を何でも聴けばいいということではなく、出来ないことは出来ないと言い、その理由を伝えることです。こども家庭庁では、大綱の答申策定にあたって、3千件以上のこども・若者の意見を聴いていますが、反映できない意見はその理由も説明しているなど、聴いた結果のフィードバックを行っています。子ども・若者をともに社会をつくるパートナーと位置づけ、対等な関係で意見交換を行っている点が意義深いといえます。
○こども・若者参画について
他都市の子ども・若者参画の事例では、まちづくりに対する問題意識を持った高校生と地元市議会議員との意見交換や、若者議会を設置して図書館のリノベーションにつなげるなどの取組みが行われています。
こうした体験が徐々に積みあがることによって、子ども・若者に社会参画の意識が芽生えていくのではないでしょうか。実際に子ども・若者の社会参画の実践があった他都市の調査では、「将来、社会のために役立つことをしたい」と答えた割合が非常に高いという結果が出ています。
○意思形成支援について
これまでお伝えしてきたような子ども・若者の意見反映のためには、彼らが本音で意見を言えるような社会を創ることが大切です。子どもたちは大人の顔色を伺いながら意見を言うこともあるのではないでしょうか。本音の声を聴かないと本当の「意見反映」ではありません。
また、意見を言うことはひとつのスキルでもあるため、ある程度のトレーニングが必要になります。まずは身近な問題から意見を言えるような環境づくりをしていくような意思形成支援がこれからのポイントだと考えています。
2.情報・意見交換「子ども施策等における子ども・若者の意見表明と参加について」
第2部では、土肥さんのお話を受けて、「本当に意見を捉えるとはどういうことか」「子ども・若者たちと対等であるとはどういうことか」などについて、出席者それぞれが自身の実践の場も振り返りながら、意見交換を行いました。
○土肥さんのお話を聞いて子どもだけでなく、若者の意見にも言及されている点が心強かったです。自分の言葉を紡いでいくような意見形成の場づくりにこだわりを持ちたいと思いました。
○大人でも周囲の顔色を見て発言することがあります。大人ができないことを子どもが実現していくのは難しいと思うので、「なぜ意見が言えなくなるのか」という問いが大事だと考えました。○子ども食堂では、集団のルールに対する子どもの「嫌」「やりたい」という声を聴いて、しっかりと話し合うことを大切にしています。そうしていくことが子どもの意見表明につながると考えています。
○本音の声をどう引き出すかはずっと課題にしています。集団のルールに対する子どもの「やりたくない」といった声も、その子の本音として受け止め、理由をしっかり確認していくことが大切だと思っています。前向きな声ばかりでなく、いろんな声をどのようにキャッチするかが子どもの本音の声を受け止めることにつながるのではないでしょうか。私たちの居場所でもそのような環境を創っていきたいです。
○自らの実践の場が大人の理想だけを実現した場所になっていないか、どれだけ子どもたちの意見を反映できているか、あらためて見つめ直してみようと思いました。
○子どもたちが身近にあるほど、自分がその子の限界を勝手に決めてしまっているのではという気づきになりました。
○他都市の事例にあったように、子どもと一緒に議論を重ねることが素敵なまちづくりにつながっていくことを地域から発信していくタイミングになっているのではと思います。
今回、国の動向や全国の実践について理解を深めるとともに、子どもが意見表明・意見形成しやすい場のあり方などについてそれぞれの立場からの情報交換が行えました。
参加者から出た意見を踏まえ、権利の主体である子どもにとっての居場所について、継続的に議論する機会を設けていきます。
参考:三宅さんによるグラフィック・レコーディング