【市域】≪報告≫子どもの居場所づくりの現状とこれからを考える情報交換会(ラウンドテーブル)を開催しました!【10/12開催】

 コロナ禍で子どもたちや子育て家庭を取り巻く環境が変化し続けています。子どもの貧困や社会的養護、少子化の問題なども社会の関心事になっています。このような現状に対して国では、「こども基本法」や「こども家庭庁設置法」が成立するなど、子どもを包括的に支援する動きが進み始めています。
 京都市内では、コロナ禍にあっても子ども食堂や学びの場といった新たな子どもの居場所が、地域の交流や子どもの支援の場として増え続けています。
 そのような中、今回、子どもの居場所づくりの「いま」と「これから」を深め、これからの方向性を探ることを目的に、第一線の子ども・若者、子育て分野に関わる皆様をお招きして、ラウンドテーブルを開催しました。
 「子どもの居場所」「子どもの権利」「社会的養護」「共同の子育て」を軸に、当日の要旨を事務局で編集して、ダイジェスト版としてまとめました。後段のグラフィックレコーディングと合わせて報告します。

≪参加者≫ 順不同
村井 琢哉さん (山科醍醐こどものひろば 理事長)
長瀬 正子さん (佛教大学社会福祉学部 准教授)
宇野 明香さん (特定非営利活動法人happiness 理事長)
藤本 明美さん (NPO法人 京都子育てネットワーク 理事長)
三宅 正太さん (山科醍醐こどものひろば/ファシリテーション グラフィッカー)

1 子どもの居場所づくりの「いま」
   -コロナ禍でも子どもの日常は止まらない-

○日常や子どもの生活と成長は止まらないのに、コロナ禍の環境によって、これまでの活動を止めてしまってよいのでしょうか。「まずは、やってみようよ」という周りの協力者の声にお互いが励まされながら支援を広めていました。
○子どもにとっての時間は、大人とは異なります。コロナ禍の制限によって、子どもは、今だからこそ挑戦できることや、家族以外の大人と出会う機会が奪われていないでしょうか。その結果、選択肢がどんどん狭くなって、経験が得られなくなっていることを危惧しています。子どもの豊かな発想を妨げないよう、子どもにとっての機会の保障が重要です。
○子育ての居場所づくりの20年をふりかえり、親の居場所のあり様や、親同士の関係性のあり方が変わってきていると思います。孤立が深まっている親が増えています。また元気にしている子育て世代に対して、元気だから関わらなくてもよいというのとは違うと感じます。

2 子どもの権利の視点から考える
   -子どもにとっての安心を広めよう-

○こども基本法制に子どもの権利条約が位置づくまで条約の批准から30年かかりました。
また、コロナで子どものしんどさが浮き彫りになりました。学ぶ権利、休む権利、自分の困りごとをきいてもらえる権利・・・、そのような子どもが権利を奪われた状態で生きています。
○まだまだ子どもの権利の保障は制度や施策には根づいていないので、これからどう活かしていくのかが課題です。
○専門職はもとより、子どもも大人も「子どもの権利」を学ぶ機会をつくり、もっと、子どもの代弁機能など、子どもの声をベースにした支援が大切です。
○子どもの最善の利益を守ること、それは親の利益を守ることにもつながっていくので、子どもに関わる大人も、自分の声を取り戻していくことが必要です。とくに子育て世代は次々とステージが変わっていくので声をあげずに終わっています。
○環境によってポテンシャルを発揮して変わっていく多くの子どもと出会いました。支援がうまくいったという実感より、子ども自らが乗り越えていく場面も多いのではないでしょうか。
○もっと子どもへの権利侵害を防げるよう、オンブズパーソン・コミッショナー等、子どもの声とともにのような制度を変えていける仕組みも必要です。

3 子どもの居場所づくりの「これから」
   -支援の輪を拡げ、協働を深める-

○「安全」は広がっても、「安心」は広がらない・・・。もっと広い視点で居場所を捉え直し、「どんな家庭の子どもでも受け入れる」ことができる居場所を目指したり、子どもからSOSが出た時には一歩踏み出せるような運営者が増えてほしいと思います。
○子どもに関する相談窓口は増えているものの、様々な要因で拒絶してしまうこともあり、何気なく困りごとをつぶやける場としての居場所が地域にある意味は大きいです。
○むしろ活動が休みの日こそ、子どもや親同士がインフォーマルにつながれている関係性(出会い直しの場)がつくられているかどうかがポイントではないでしょうか。
○誤解を恐れず言えば、家や学校がしんどくなっても、安心して「家出」のように外に出ることができる地域をどう創っていくかを考えていきたいです。
○行政機関も民間団体も、大人が決めてしまう前に子どもにとってどうだろうと、子どもから話をきいたり、さらにみんながそれぞれの生活の言葉で子どもの権利を話せる社会にしていきたいです。
○一つの組織が全部やらなくてもいいのです。民間は民間でやれることを、行政には行政の役割でチャレンジしていくこと、社協には公と民とのつなぎや連携、仕掛けを期待したいです。
○子どもがいなくても、子育ての経験がなくても、「参加していいよ」という土壌がもっと地域にあったらいいなと思います。
○こじれた困りごとは、居場所があるからすぐに改善する、というものでもありません。この先も支援の輪を広げ、協働して走っていけるのかが問われています。

参考:三宅さんによるグラフィックレコーディング